浄土真宗本願寺 福岡教区

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実践運動計画書

1.総合基本計画

 「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)は「あらゆる人々に阿弥陀如来の智慧と慈悲を伝え、もって自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現」(『宗制』)をめざし宗門 (浄土真宗本願寺派)全体で推進する運動です。

この運動は、「本願を究極の依りどころとして生きられた親鸞聖人に学び、つねに全員が 聞法し全員が伝道して、わたくしと教団の体質を改め、差別をはじめとする社会の問題に積極的にとりくみ、御同朋の社会をめざす」基幹運動の成果と課題を踏まえ、さらにみ教えを宗門内外に広く伝えていき、同朋教団として非戦・平和、差別・人権の問題に取り組みながら、多様な活動をより広く実践していくことをめざして、2012(平成24)年4月から始動しました。

 2016(平成28)年には、専如門主は伝灯奉告法要に際し、ご親教『念仏者の生き方』において「国の内外、あらゆる人びとに阿弥陀如来の智慧と慈悲を正しく、わかりやすく伝え、そのお心にかなうよう私たち一人ひとりが行動することにより、自他ともに心豊かに生きていくことのできる社会の実現に努めたいと思います。世界の幸せのため、実践運動の推進を通し、ともに確かな歩みを進めてまいりましょう」とご教示され、『念仏者の生き方』が私たちの実践してきた「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)に通じるとお示しくださいました。

 私たちは、阿弥陀如来の智慧の光明に照てらされるとき、良いことは何一つできない、苦しみの世界から抜け出せないということが徹底的に知らされてきます。それと同時に、そのような私であるからこそ救わずにはおられない阿弥陀如来の慈悲に包まれていることに気づかされ、自ずと大きな喜びと深い感謝の念に満たされます。そして、この私の日暮らしはいまだこの世よにある限りは、日々何かを為しながら生きていることにも気づかされていきます。私が為してきたことの結果がこの社会であり、その社会のあり方のゆえに苦しめられている人々がいます。他人事としての苦しみがあるのではなく、まさしく私がその苦しみの原因の一部を為しているという慚愧の思いが伴ないます。み教えに出遇った喜びと、慚愧の思い、ここに、自分の生き方が、阿弥陀如来の慈悲によって生かされる私たちの姿が、新しく開かれてきます。 『仏説無量寿経』には、あらゆる世界に生きるすべてのいのちあるものが、阿弥陀如来のはたらきによって分け隔てなく救われていくことが示されています。親鸞聖人は、阿弥陀如来の救いを依りどころとして、ともにお念仏を喜ぶ仲間を「とも同朋」「御同行」と呼び、世の中にあって苦しむ人々に対し「いし・かはら・つぶてのごとくなるわれらなり」とご自身の上にとらえられて、ともに生き抜かれました。同朋とは、社会の最も弱き立場にあるものを顧みてこそのものなのであり、それでこそ真しんの僧伽さんがが形成されていくことを教えてくださいます。その親鸞聖人のお姿を鑑として、互いに支え合って生き抜いていくことが、まさしく私たち念仏者一人ひとりに問われているあり方といえるのでしょう。

 私たちは、私たち自身がつくりあげてきたこの社会にあって、人権や平和という、ともに生きるための課題がしっかりと共有されているかを確認することが大切でしょう。私たちには戦争に加担し、差別を助長してきた歴史があります。その歴史を遠い過去のものとしてしまうのではなく、いまを生きる私たちの課題としていくことが重要です。そのことは、いまも私たちが平和に背き人権をないがしろにしている姿を明かしていきます。また、私たちは異なる状況や環境のなかで、国や地域、性や家庭や職業、世代や時代というそれぞれの立場にあって、特有の課題にも向き合いながら、ともに生きることを疎外し、いのちの共感を妨さまたげているものを、み教えに基づき、私たち一人ひとりがそれぞれに知らされ見抜いていくこともさらに大切です。
 現代社会は、他者や自然を都合のいい道具や単なる手段の一部とみなす人間の本性が加速し、多様な価値観を認め合えずに、互いに対立し合っているのではないでしょうか。続発する災害、エネルギーや環境の問題、経済格差による貧困問題、自死・孤立、生きづらさや無自覚の攻撃性、さらにはテロや武力紛争・戦争、差別を含む人権抑圧などの様々な悲しみと苦悩の現実があります。また、人口流動や家族形態の変化、過疎や少子高齢化、子どもや若者へのご縁づくり、国際的な伝道、法要や葬儀儀礼の簡略化など、様々な問題と課題に直面し、私たちの伝道活動がたいへん難しくなっています。

 世の中における私たちのいのちの営みと真実のみ教えの相続の前に山積する、こうした課題に仏法を依りどころとして立ち向かっていく具体的な実践によってこそ、「阿弥陀如来の智慧と慈悲を伝え、もって自他共に心豊かに生きることのできる社会」が実現されていきます。専如門主は、こうしてご本願に生かされて生きる私たちの姿について、「自分だけの安穏を願うような自己中心的な生き方から、人々の苦悩をともにしていく生き方への転換であり、そこから大智大悲という如来のお徳とくを真実と仰ぎ、それに沿うよう努める念仏者の生き方が開かれてきます」(『親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要御満座の消息』)とご教示くださいました。私たちは宗門の英知を結集しながら、ともに「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)を更に推進いたしましょう。

2.スローガン

「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)の主旨を簡潔に表したスローガンを掲げます。

「結ぶ絆から、広がるご縁へ」

3.重点プロジェクトについて

重点プロジェクト

 「重点プロジェクト」は、「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)総合基本計画に基づき、具体的な実践目標を定め取り組むものです。
 変化の速度が著しい時代状況の中、宗門が「重点的」に取り組むべき社会的課題も変化します。 変化する時代状況を踏まえ、社会への具体的な貢献をめざし、年限を決めて実践されるのが「重点プロジェクト」です。
 その特徴は、門(もん)信徒(しんと)、僧侶(そうりょ)、寺族(じぞく)、そして寺院やさまざまな団体が、 それぞれの特性に応じて、独自に「実践目標」を定めて、活動を推進していくところにあります。
 重点プロジェクト推進室では、こうした活動に対して、情報提供などの支援を行います。 各活動主体のさまざまな取り組み、各地の実践事例を提供いただき、それを集約、発信します。
 「重点プロジェクト」では、宗門のあらゆる人々が実践事例を有機的に結びつけ、 課題を共有しつつ、計画的に推進することにより、宗門全体の活動がより充実したものとなるよう展開していきます。

推進期間

2024(令和6)年度から2027(令和9)年度までの4年間

御同朋の社会をめざす運動(実践運動)

「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)第5期福岡教区総合基本計画

【2024(令和6)年度~2027(令和9)年度】

 「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)は2024年度から2027年度までの4年間を第5期として取り組んでいきます。
 私たちを取り巻く社会情勢は多くの悲しみと不安に満ちています。私たち一人ひとりがあらゆるいのちを救いの対象とする阿弥陀仏の願いにであい、支えとしながら社会の中の苦悩を他人事とすることなく生き抜いていくことが「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)です。
 私たちの直面する課題は一つではなく多岐にわたります。時代の波にのまれメディアなどで大きく取り上げられる課題のみに注力してしまうことや、自らの課題は目の前の事象一つでよいと決めつけてしまい自己満足で終わってしまうことで、誰かの悲しみを諦めさせたり、押し込めることを強制することのないようにしなければなりません。このことは、これまでの4期12年の活動の中でも度々「現実の苦悩や課題からスタートする運動ではなく、仕事として与えられた運動となっていないか」という声があがっていることにも通じる反省です。
 そのためにも、これまでの「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)の取り組みを振り返ると同時に、それ以前より「同朋運動」「門信徒会運動」から「基幹運動」へと続いてきた様々な取り組みを点検し継承していく必要があります。
 教団の抱える差別体質や非戦平和への取り組みなどについても成果は生みだしつつも、まだまだ十分とは言えません。継続してそれぞれの学びを深めつつ、新たな課題として災害支援や自死、貧困などについてもその課題解消に向けて取り組みを進めていきます。

<貧困の克服に向けて〜Dāna for World Peace〜>-子どもたちを育むために-

専如門主は、『念仏者の生き方』の中で、世界規模での人類の生存に関わる困難な問題の一つとして、「経済格差」を指摘されています。世界的な経済格差は富の偏在により深刻な貧困問題を引き起こし、実に多くの人々が貧困の状況におかれ悲しみ苦しんでおり、特に弱い立場である子どもや高齢者がその影響を強く受けています。さらに、この経済格差がもたらす貧困の問題は、紛争やテロを引き起こす大きな要素ともなっており、あらゆる人々が共に心安らぐことのできる平和な世界を実現するためにも、積極的に克服すべき課題です。
宗門では、戦没者追悼法要をはじめ、戦後長く非戦平和への取り組みを進めてきました。そして、2015(平成27)年の戦後70年を機縁きえんとして、3年間にわたりあらためて平和への学びを深めて、平和貢献策に関する議論を積み重ねました。それを踏まえ、公聴会こうちょうかいなどで様々な意見をいただきました。そして、暴力・貧困・差別・不平等など戦争が起きる原因がない状態としての平和をめざす観点に立ち、平和実現のために国内外の貧困の克服に取り組むことが、今後注力ちゅうりょくすべき課題であると総合的に判断しました。
 また、「子どもの貧困」は、社会的に弱い立場にある子ども自身ではどうすることもできない貧困です。そして、そうした貧困は、やがて次世代へと連鎖していく傾向があります。念仏者として、子どもたちに寄り添うことが求められています。さらに、国際連合でSDGsエスディジーズ(持続可能な開発目標)が採択され、「誰一人取り残さない」の理念のもと、貧困問題に取り組んでいます。国内外の様々な組織が連携しつつ、その課題克服へ取り組む中で、宗教者に向けられた期待は高まっています。
 これらの現状を踏まえ、2018(平成30)年度より、宗門では、より多くの人や寺院が参画できる取り組みとして、<貧困ひんこんの克服こくふくに向むけて~DānaダーナforフォーWorldワールドPeaceピース~>-子こどもたちを育はぐくむために-を重点プロジェクトの実践目標として定め、世界を視野に入れ長期的展望に立ち、お釈迦しゃかさま以来、仏教が大切にしてきた「布施」の精神をもとに、できることから実践し、生存に関わる貧困・人権を侵害する見えにくい貧困の克服に、今後も継続して取り組みます。
 2025(令和7)年に戦後80年を迎える今、いまだ世界中で戦争や紛争は絶えず、分断や対立はますます深まり、格差・貧困が深刻な問題となっています。私たちの取り組みは、今まで以上に重要になっているといえるでしょう

福岡教区重点プロジェクト実践目標について

<貧困の克服に向けて ~Dāna for World Peace~ >-子どもたちを育むために-

 福岡教区では近年、宗門の定めた重点プロジェクトの実践目標をもとに「貧困」を課題として研修会の開催などの取り組みを行ってきました。また、教区内各組においてはこれと併せて「災害支援」や「寺院活動(み教え)をとおして悲しみに寄り添うこと」などを目標として設定してきました。
 これらの活動を引き継ぐ第5期前半の福岡教区の取り組みとして、まず教区内各組のこれまでの活動の課題と成果を共有することで「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)および「重点プロジェクト」の意義を再確認します。み教えを支えとして生きるということは特別な活動を行うことではなく、それぞれの念仏者としての日々の営みの集合が「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)であることを確認していきます。そのうえで社会と私の課題に対する取り組みを学び、考えることで運動をより推進していきます。
 また、第5期後半では確認された課題への取り組みに対して教区として支援する方法を確立し、具体的に実践することを目指します。
 「貧困」をはじめとする社会における種々の課題は多面的な要因によってもたらされます。その要因の一つが社会を構成する「私」です。自らの姿を改めて受け止めなおしたときに取り組むべき活動は明らかになっていきます。私たち一人ひとりが、お念仏をいただくものとして、支えあいながらも主体的な自身の歩みを確立させることを目指して運動に取り組んでまいります。