浄土真宗本願寺 福岡教区

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「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)推進についての 意見具申

重要

2017年01月19日

2017(平成29)年1月19日

「御同朋の社会をめざす運動」

中央委員会 御中

 

福岡教区教務所長

菊 池 慈 峰

 

「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)推進についての意見具申

 

今般、「御同朋の社会をめざす運動」の実践に関する宗則第十二条第一項第五号により、下記の事項を意見具申いたします。

 

 

1.宗門の主導で、全国のハンセン病療養所における「真宗会館」の保存を!

 

全国13か所のハンセン病療養所は、高齢化により入所者の数が減少していることから、施設の統廃合が論議され、建物の除却が進められています。そこには苦悩の生活を余儀なくされてきた方々が拠りどころとしてきた宗教的施設もあり、特に浄土真宗に生きてこられた方々が、如来様に礼拝し、み教えを聞きながら折々の行事を行ってきた建物、「真宗会館」(仮称)があります。

鹿児島県鹿屋市の星塚敬愛園には山中五郎という篤信の方が発願して、園内外の多くの方々の寄進により建立された「星塚寺院」があります。しかしそこも山中師の没後50年が過ぎ、管理運営してこられた真宗同愛会も会員の高齢化に伴って解散され、月日の経過とともに維持が困難になりつつあります。その「星塚寺院」にはご本尊や仏具などとともに本願寺光照門主(当時)の染筆や協力者の写真など、礼拝堂に相応しい往時のたたずまいが辛うじて残っています。その本堂に座れば多くの方々が真剣に聴聞されお念仏されたであろう熱気が伝わってきます。

しかし山中師の薫陶を受け真宗念仏を相続されてきた方々も高齢となられ、また往生されました。寺院の建立に至る経緯が分かる資料の保存や日常の運営などの聞き取りも急がなければなりません。

星塚敬愛園のほかの全国の療養所でも事情は変わらないと思われます。それぞれの園の建物はどのように建てられたのか、現在どうなっているのか。元患者さんたちがどのような思いで真宗の信仰を求め、安らぎを得ようとしてこられたのか。そこでどのような人々が奉仕布教をしてきたのか。また、本願寺宗門やそれぞれの教区はどのような関り方をしてきたのでしょうか。

S布教使差別布教から今年は30年。その布教の問題性は一応学習されてきたものの、元患者さんたちの側に立って、この方々がいかに求道してこられたかまでは思いが到り届いていなかったことを反省させられます。

この世に生を受けた命が無意味であるかのような人生を強いられたなかで、本願念仏に遇うことによって辛うじていのちを回復してこられた方々の遇法聞法の場であった「星塚寺院」をはじめとする全国ハンセン病療養所内にある御同朋の「真宗会館」(仮称)が存続されていくよう、また、後世に伝わっていくための記録保存について、浄土真宗本願寺派としてご尽力くださることを切にお願いいたします。

 

2.『拝読 浄土真宗のみ教え』中の「浄土真宗の救いのよろこび」を、現代の『領解文』として明確に位置づけてください

『拝読 浄土真宗のみ教え』は、親鸞聖人のご法語をもとに、簡潔で分かりやすい内容なので日常の伝道において大変重宝しております。

その中でも「浄土真宗の救いのよろこび」は、教義の基本構造を平易な言葉で、一人ひとりの人生の上にみ教えが身に付くように、如来の本願のはたらきと凡夫の上に具体化していく次第に沿って表現してありますから、法座や研修の終りに参加者一同で唱和されることが多いようです。

福岡組でも、本書が発行されてすぐから、現在第20期に至るまでの「連続研修会」において毎回、プログラムの最後に参加者もスタッフも一緒に唱和しております。

このことはすでに本書の解説のなかに、「『領解文』のよき伝統とその精神を受け継いで、浄土真宗の救い、信心のよろこびを自ら口に述べる文章です。」とされている通りの使われ方と働きをしている訳ですから、実質的に「現代の『領解文』」と言ってよいのではないでしょうか。

ところが、「宗門総合基本計画」には、「基本方針Ⅱ-4.念仏者の生活実践」として「⑫現代版『領解文』を制定し拝読する。」と計画されています。

これは現にある「浄土真宗の救いよろこび」が、各寺各組の現場で実質的に「現代の領解文」として依用されていることをご存知ないのか、ご存知の上で屋上屋を重ねる愚を敢えてなさろうとしてあるのか、いずれかとしか思えません。

そもそも『領解文』は、門徒一人ひとりが間違いなくご法義を聞信したことを信仰告白として口に出して確認するもので、大谷派では『改悔文』と称され、自らの誤った信心の戴きかたを悔い改めるために唱和されています。しかも、「御一同に…出言」する有り様は真宗念仏者としての僧伽の確認(同朋意識)を促すものであったでしょう。蓮如上人、山科別院建立後頃から唱和されてきたといわれますから、500年の間綿々と発声されてきたものです。そして、今でもご法座を締めくくる儀礼として各寺院で「領解出言」されています。

この度あらたに現代版『領解文』を制定されるためには、先ずは500年にわたって依用されてきた『領解文』が成立した背景や今日まで果たしてきた役割を総括し、その上で現代版『領解文』を制定する必要があることを説明されなければなりません。

また、ここ数代の総局におかれましては、「新安保法制」や「原発問題」についての総長声明を求める要請が多くの教区から幾度も出されながら、それにさえも応えることが出来ないでいます。このような宗門状況において、どうして「現代版『領解文』を制定」することができましょうか。

このように現代版『領解文』を制定するには多くの問題があります。平易な言葉でないと現代にそぐわないなら、「浄土真宗の救いのよろこび」がその役目を充分に果たしています。「浄土真宗の救いのよろこび」を、現代の『領解文』として明確に位置づけてください。

以 上